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トロワ姫と愉快な仲間たち 《 投稿作品 vol.34 》 |
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作品名 : トロワ姫とカエルの王子様 |
王子様 : 五飛 | | 投稿者 : どむ さん |
『國一番の美姫』と謡われたトロワ姫には、浮いた話が一つも有りませんでした。
と、いうのも、姫の兄君=国王・トレーズ陛下の眼鏡にかなう相手というのが見つからなかったからです。何しろ、妹(弟?)のトロワ姫を溺愛状態、大事に可愛がっておりますから、可愛い妹姫(?!)を何処の馬の骨か解らん輩にはタダであげたくないのでしょう。「トロワ姫の婿(義理の弟)には、姫より強い男に」なんておふれなんぞを出しております……が、このトロワ姫、めちゃくちゃ『強かった』のです。ですから「美人を守る」なんて軽い考えでは眼鏡にかなう訳でもなし、それ相応の実力をもって、ようやく『お友達』になれた位でした。
幼馴染みで大臣の息子・カトル、騎士団長の息子で叙任されたばかりの騎士・ヒイロ、王立神学校の神学生・デュオの3人とは、陛下も認める1番の『お友達』では有るのですが、どうもそれ以上という感じでは有りません。
そんなトロワ姫は、いつも大切な神噐「ヘビーアームズ」と呼ばれる首飾りをしています。王族の証であると同時に、王宮の奥の封印された宝物庫やその先の武器庫等の『鍵』でも有るからです……つまり、『最強』のトロワ姫が『神噐』守っている訳ですね。
ある日の事でした。
トロワ姫が護衛もつれず(大概は必要無い)森を歩いている時、「ヘビーアームズ」を狙う刺客達に襲われました。何時もならヒイロ達が一緒に居るので、彼等も一緒になって守ってくれるのですが、この時ばかりはそうはいきません。しかし、トロワ姫はこの國最強のお姫さまです。身軽に相手を飛び越し、的確に急所を狙った体術でこてんぱんにのしてしまいました。
しかし、その乱闘の際、大切な「ヘビーアームズ」を傍の大きな泉の中へと落としてしまったのです。「ヘビーアームズ」が他の誰かの手に渡ってしまったら、それこそ大変な事になります。
「………」
トロワ姫は泉を覗き込みます。水そのものはとても綺麗ですが、落とした首飾りが解らない程深いみたいです。水は冷たく、森の中は涼しいので、水浴びにはまだ少し辛い時期です。
「……仕方がないか」
でも、「ヘビーアームズ」をこのままにしておく訳にはいきません。トロワ姫はドレスの裾をたくしあげ、靴を脱いで泉の畔に足を差し込もうとしました。
その時です。
「おい、貴様!」
何処かから声がします。姫は辺りを見回すのですが、誰も居ません。
「貴様!呼んでいるだろうが!俺は此処だ!返事をしろ!」
此処だ、と言われても見当がつきません。トロワ姫は辺りをキョロキョロと見回すのですが…
「何処を見ている?!だから、貴様の足下だ!」
その声に気がついてトロワ姫が足下に目を向けると、そこに居たのは1匹のアマガエルでした。アマガエルとしては非常に大きく、例えるならば、ガマガエルより1回り以上は大きいのです。
「…カエル、か?」
姫はしゃがんでカエルと目を合わせました。
「貴様、俺の泉に何かを落としたのだろう」
トロワ姫を、水かきのついた前足で人の様に指しながら尋ねてきます。
「ああ、大切な首飾りを落としてしまったんだ」
多少、動揺の色は隠せないものの、トロワ姫は頷きました。
「それでこの泉に入ろうとした訳だな。しかし、この泉は深い。人間がものを探すのには不適格だ」
随分偉そうな口調ですが、カエルの言う事に間違いは有りません…トロワ姫が見たって、その泉は広くて深いのです。
「代りに、俺が探して取って来てやる。何しろ、この泉は俺の家だ」
カエルが自分をさして言いました。
「すまない。では、よろしく頼む」
申し訳なさそうにトロワ姫が頼むと、カエルは「3分位待っていろ」と言ってじゃぷん、と、泉に飛び込みました。
それから待つ事トロワ姫の感覚にしてきっちり3分後、カエルが首飾りを抱えて水面に戻って来ました。
「本当にすまない。これは、俺にとっても、俺の國にとっても、とても大切なものなんだ」
しかし、まだカエルは姫に首飾りを渡しません。
「礼の代りと言っては何だが、一つ頼みが有る」
「構わない、俺に出来る事なら何でも言ってくれ」
カエルはひとつこほんと咳払いをすると、姫の顔を覗き込んで言いました。
「俺にキスをしろ」
「………どう言う事だ?」
何故、カエルはいきなりそんな事を言うのでしょう?トロワ姫はじっと、カエルを見つめ返します。何やらこのカエル、いわくが有りそうです。
「俺はこれでも元々は高貴な生まれだったのだが、呪いでカエルにされしまった。その呪いを解く為には、『心の清らかな乙女』のキスが必要だからだ」
「少なくとも、俺は…」
別に、トロワ姫が『既にそういう事』であると言う訳ではありません。寧ろ、トレーズ陛下のお陰で『清らか過ぎる』程です。
「どうせキスをしてもらうなら、『絶世の美姫』が良い。だから俺は貴様に頼む」
世に言う「ファースト・キス」の相手がカエル…トロワ姫は悩みます。しかし、このカエルが「ヘビーアームズ」を拾ってくれたのは事実。それに、トロワ姫は元々動物は(両生類も爬虫類も猛禽類も猛獣も)大好きなのです。
「……そうだな。約束は、約束だ」
少し考えたトロワ姫は意を決し、両の手でカエルを救い上げるようにして、その美しい顔に近付けました。
が。
「そこまでだ!『ヘビーアームズ』を渡してもらおう!」
性懲りもなく、また刺客が現れました……その数、約20人。酷い事にだんびらかざしている連中迄おります……さしものトロワ姫でも、この人数は少々時間が係りそうです。
「今はこいつらを始末する方が先だ」
トロワ姫はカエルと「ヘビーアームズ」を泉の畔に戻そうとしました。しかし
「迷ってる場合ではない!先に俺にキスをしろ!」
言うなり、カエルの方がトロワ姫に飛びかかり、ちゅ、とかわいらしくその唇を奪ってしまいました。いきなりの出来事に驚くトロワ姫。しかし、それよりももっと驚くべき事が目の前で起ったのです。
掌に居た筈のカエルが消え失せ、代りにトロワ姫と刺客達の間に、腰に彎曲した刀を下げた、東洋風の身なりのよい服装の黒髪の男が立って居たのです!
「ようやく元の姿に戻れた。これで俺は戦える!」
トロワ姫を守る様に、黒髪の男が刀…青龍刀を抜き放ちました。刀身に龍の意匠が刻まれています。その煌きと男の隙のない闘気に、刺客達は息を飲みます。
「弱いものが、この俺に楯突くな!」
黒い瞳の黒髪の男が青龍刀を一旋すると、物凄い風圧がおこり、あっという間に5〜6人が倒されてしまいました。トロワ姫も目を見張る程の圧倒的な強さで、この男は刺客達を息一つ乱さずあっさりと片付けてしまったのです。その速さ、注いだ酒が冷めぬ間に華雄を討ち取った関羽の如し。
剣を収めた東洋風の男がトロワ姫に歩み寄り、手にしていた神噐「ヘビーアームズ」を差し出しました。
「先刻のカエル……なのか?」
「ヘビーアームズ」を受け取ると、姫はまじまじと相手を見つめました。気品といい、精悍そうな表情といい、この強さといい、これはトロワ姫どころか兄王すらも文句も言えない程、申し分ないタイプです。
「そうだ。俺の名は張・五飛。東の國の皇子だったが、呪いでカエルにされていた……礼を言う」
東の皇子・五飛はトロワ姫の手を取って跪き、西の國の流儀で姫の手の甲にそっと口付けをしました。
「否、礼を言うのは俺の方だ。立ってくれ。お前を兄に紹介したい」
五飛の手を両手で取り、トロワ姫は五飛皇子を立たせます……2人はとってもいい雰囲気。見つめあって、そのまま………
突然、トロワ姫の視界から五飛皇子の姿が消えました。
「な……何なんだ?!俺は元に戻れたんじゃないのか?!」
その声に気が付いて、姫は足下に目を向けました……足下には、先程のカエルが居たのです。
『甘いわよ、暴れん坊の五飛皇子!』
突如響く女の声。
「サリィ!貴様か!」
カエル王子・五飛が叫びました。霞と共に現れたるは、東の國の女神、否、仙女の姿でした。
『たかが一度のキスで元に戻ると思ったら大間違いよ。1回のキスで戻れるのは精々5分。100回キスしてもらわないと、その呪いは解けないの。元に戻れる迄、しっかり反省なさい』
東の皇子・五飛は、その強さのあまり、手もつけられない程の暴れん坊でした。困った五飛の父=現皇帝は仙女・サリィに頼みこみ、彼女は仙術で『五飛皇子が大人しくなる迄…』と、五飛皇子をカエルの姿に変えていたのです。
サリィが再び霞と共に姿を消してしまうと、しょぼくれたカエル五飛が一言、トロワ姫に言います。
「姫……キス、後、99回……」
トロワ姫はカエルを拾い上げ、キスする代りに言いました。
「後99回キスをして5分間づつ戻っても、単純計算で3日半は係る。その間、俺がずっと此処にいる訳にもいかない。しかし、お前は『ヘビーアームズ』と俺も守ってくれた。だから、俺はお前を連れてこのまま一緒に城へ帰る。兄にも紹介したいし、一緒にも居られる。1日に1回キスしたとしても、3ヶ月あまりで元に戻れる筈だ」
こうして変身皇子・五飛は、トロワ姫と一緒に(否、「連れられて」の方が正しいのか?!)仲良くお城に戻っていきました。
……しかし、五飛皇子は本当に3ヶ月程度で元に戻れたのでしょうか?或いはもっと早くに戻れたのでしょうか?トロワ姫溺愛のトレーズ陛下の反応は?『お友達』のヒイロ、デュオ、カトルの反応は?
数々の疑問は謎なまま残っておりますが、その辺りは読み手様の御想像にお任せするとしまして、1つだけ。2人(1人と1匹?)は、きっと幸せだった事だけは解る事と致しまして、お後は宜しいでしょうか。
■ 投稿者の方からのメッセージ ■
連コインならず連投状態で申し訳有りません……「カエルの王子様」ってどんな話だっけ?と調べてたら、『変身王子*エル』を思い出しまして、ケ*ルネタで書きたくなった次第でございます……この漫畫好きなんです、苦手でしたらすみません。
トロワが鞠を落として困ってる…と言うのが想像出来なくて、勝手に『首飾りのヘビーアームズ』なんてアイテムにしましたが、名称を貰っただけですので、別に首からMIAなり1/144の完成品塗装済ガンプラなり下げてる訳では有りませんので、ご了承下さい。
……こんなもの書いてしまって、本当にすみません…ちょっとでも笑ってもらえると、嬉しいのですが、流石にそれは無理難題ですね。
■ from 管理人 ■
またしても素敵な作品の投稿、どうもありがとうございます!どむさんからたくさん投稿していただけて、嬉しいです(^-^)。
冒頭からトレーズ陛下が兄バカぶりを披露してくれていて、素敵でしたvvv 兄バカなトレーズ様、大好きです(*^-^*)。そしてトロワが、大切な神噐を守る最強の姫だとはカッコイイですね!刺客もアッサリと倒してしまう姿は、さぞかしウットリな事でしょう。
そして初対面から、いきなり高飛車な物言いの五飛。とっても彼らしいと思いました(笑)。そんな五飛がカエルの姿をしていても、多少の動揺を見せただけで冷静に応対しているトロワも、さすがです。
「 どうせキスをしてもらうなら、『絶世の美姫』が良い 」 という台詞には笑ってしまいました。五飛、見る目がありますね!(笑) その上、闘気だけで刺客達を怯ませてしまうほどだとは…。“ 注いだ酒が冷めぬ間に華雄を討ち取った関羽の如し ” とのことですから、こちらもさぞかし凄かった事でしょう。
100回キスしないと呪いが解けないなんて、可哀相でもありますが、トロワと100回キスできるという点では、かなり果報者のような気も…(笑)。しかもトロワが城に連れ帰ってくれて、一緒にいられるのですから(^-^)。
トロワが五飛皇子を連れ帰ったら、トレーズ陛下には是非、苦悩していただきたいです。五飛の事は気に入っても、やはり可愛いトロワは手放したくない、と(笑)。ヒイロやデュオやカトルにも、トロワ奪還(笑)の為に頑張ってもらいたいです。たとえ、この人達の邪魔が入ったとしても、トロワと一緒にいられる五飛は、幸せ者な筈ですから(*^-^*)。
( 2004.08.04追記 )
どむさんが作品をイメージして描いてくださったイラストを、許可をいただいて掲載させていただきました。姫なトロワと、そんなトロワを指さしているカエルの五飛が可愛いですよねv どむさん、掲載許可ありがとうございました。
( 2004.09.01追記 )
イラストをカラー版と差し替えさせていただきましたv
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