ある静かな夜、トロワ”ジュリエット”姫は館のバルコニーに佇んでおりました。彼は記憶を失っていました。道ならぬ恋を諦めさせようと、彼のお父様が一服盛ったのでした。(ちなみにそのエキセントリックなお父様の名はトレーズといいました・・)
トロワが自室に繋がるバルコニーで月を見上げ、ため息をついていた時のこと。突如轟音と共に一台の重装備ヘリコプターが舞い降りました。ヘリは数分ホバーリングした後、上等のスーツを品よく着こなした、金髪の少年を残して去っていきました。
予期しない出来事にやや気圧されつつも、トロワは尋ねました。
「・・誰だ?」
少年はカトル・ロミオ王子。
彼はにっこり笑うと答えました。
「嬉しいよ。また会えたね。」
「・・・誰だと聞いているのだが・・・」
困惑したような表情のトロワに、カトルは思わず涙ぐみました。
「仕事に忙殺されて暫く来れなかったばかりに、こんなことになってしまって・・ごめんね。でも大丈夫。必ず僕のことを憶い出させてあげるから・・・。」
カトルは優しくトロワを抱き上げると、部屋の奥へ連れていきました。
不気味な呟きと共に。
「二度と忘れないようにしてあげるよ・・。」
*** END ***
|