トロワ姫と愉快な仲間たち   《 投稿作品 vol.32 》
 
作品名 : トロワ人魚姫と王子様
   王子様 : デュオ 投稿者 : どむ さん

───この短剣で、デュオ王子の胸を突きなさい!そうすれば、貴方にかけられた呪いはとけて、また一緒に私達と海で暮らせるのよ。
 トロワの姉妹達から託された短剣。それを胸に握りしめ、トロワはデュオの寝室へと向かう。只、その足取りは決して軽いものではなかった。

 海に住むトロワの一族は、地上のものと交わりを持つ事を禁じられている。しかし、16歳を迎えた時、地上を見に行く事を許されるのだ。
 トロワが16歳の誕生日を迎えた日、トロワは姉達から聞いていた話を胸に、ひとり地上の様子を見に行ったのだが、その日は嵐で海が大いに荒れていた。そして、目にしたのである。一際豪華な客船から1人の髪の長い男が、身を投げる様に飛び込んでいく姿を。トロワは、海中に沈んでゆく男を救い、近くの海岸迄運んでいったのだ。

 
トロワ人魚姫と王子様
 

「へへ……死神にも海の女神のお迎えか…」
といって自分を見つめ、気を失った時。トロワは彼に魅了されていた。彼が忘れられず、自分の音楽的と言われた声とひきかえに「ひと」の姿を手に入れたのだ。但し、1週間以内にデュオと結ばれないと、トロワは海の泡となって消えてしまう……そんな呪い迄かけられて。

 「ひと」の姿となって、デュオのもとに引き取られ、トロワは満ち足りた日々を送った。城内の不穏な空気にうんざりしていたデュオは、殊更トロワを側におき、始終話し掛けていた。トロワが声を失っていると分っていても、その巧みな話術と豊富な話題……国民の事や、下町の事等…トロワの知らない事を好きなだけ聞かせてくれた。
 そんな幸せも、そう長くは続かない。
 デュオ王子の婚約が決まったのだ。デュオが結婚するならば、もうトロワは此処には居られない……呪いが成熟する明日の朝、トロワは海の泡となって消えるのを待つだけだ。トロワの呪いを解く為の2つの方法のひとつ…それが、この短剣でデュオを殺す事、それだった。

 デュオの船室に向かい、そっと扉をあける。奥のベッドの上に寝ているであろう彼の人のもとへ、足音を立てない様に近付いた……しかし。
「そんな物騒なもの持って、何しようってんだい?お嬢さん」
 気配を殺したデュオがトロワの背後に回っていた。
「つめが甘いぜ、トロワ。夜這いかけてくれるなら、気配殺してくんなきゃ、バレバレだぜ?」
そう言ってウィンクをする。何で、この王子はいつもこうなんだろうか……デュオには全て見透かされてしまった気分だ。
「俺の事、殺すつもりなら構わねぇけどさ。どうせならお前に殺される方が運命的だぜ」
 言いながら、デュオは自分の心臓のあたりを親指で示す。こんな時ですら明るい表情を見せるデュオを、どうして殺す事等出来ようか?
 迷うトロワに素早くデュオが近付いてきた。そして、いきなりトロワの水月(みぞおち)に拳を叩きこんだ。
「!」
 トロワの気が遠くなる……デュオに抱き上げられる処迄は意識があったが、そこから先は憶えていない。気を失いながら、トロワはデュオの声を聞いた。
「悪ィけど、俺にとことん付き合ってもらうぜ?トロワ」

 殆どのものが寝静まっている中、デュオはトロワを抱え、甲板へと急ぐ。途中、何人かいた見張りの兵士を倒しながら、船尾の方へ向かった。周囲を確認し、手すりを乗り越えようとした時、トロワが意識を取り戻した。
「……!!」
───俺を連れて何処へ行くんだ?俺は、もうじきデュオとは二度と会えなくなってしまう。もう、離してくれないか?  そう言いたい処だが、トロワはその声を発する事が出来ない。
「何だ、気が付いちまったのか、トロワ…しっかり俺に捕まってろよ」
───デュオ……俺と一緒に消えてくれると言うのか……?
 トロワはデュオの服をしっかりと掴む。これで自分が消えてしまっても悔いがない様に。そのまま、手すりを乗り越えてデュオは海に飛び込んだ……正確には、船の死角にあって見えない、小さな船のもとへ。

 トロワを傷つけない様、衝撃を自分に来る様にしてデュオが船に飛び込んだので、少々足にきてしまった。それでもまず、デュオはトロワを船に座らせ、繋いであったロ−プを切ると、帆をあげてオ−ルを取り出す。少しこぎ出すといい風が巡ってきたからか、小舟は船から距離を離していった。
「全く、王宮って処は上品すぎて窮屈でたまんねぇ。その上、政略結婚なんてやってられっかよ」
 何時も通り、トロワに独り言を零す様に話し掛ける。
───お前は、その王宮の王子、王位第一位継承者なのではないのか?
 残されたトロワの短い時間の中、目でトロワはそう語った。それがデュオにも通じたのだろうか。
「何でかって顔してんな?俺のお袋は身分が低いもんでね。その上、変な予言者に『死神』扱いされたのもあってな…俺が生まれた頃、王宮で大火事があって沢山の人が死んだってのに、俺だけ生き残ったとか、そういうのが何度もあったんだ。なもんだから、幾ら第一王子とはいえ、3年前迄下町の乳母夫婦の処で平民と一緒に暮らしてたからな。いきなり王子だ何だ言われてもピンとこねぇっての。王位争いだの権力争いだの、汚ねーのが蠢いてる王宮なんてうんざりでさ。お前に出会う前、俺、わざと嵐ン時、海に飛び込んだんだぜ」
……それが、トロワがデュオと出会ったあの時だ。
「そうしたら、お前によく似た海の女神様に助けられた夢見てさ」
 嵐で沢山の犠牲者を出してもデュオは生きて戻ってきた……デュオ王子が『死神』と呼ばれる由縁だった。
「それに」
 そこで一端言葉を区切って、トロワの万緑を映した湖色の瞳を覗き込んだ。
「俺はトロワ以外のやつと結婚しようなんて、これっぽっちも考えてねーからさ」
 そこ迄言うと、まだ事体を飲み込んでいないトロワに素早く口付けた。
「愛してるよ、トロワ」
……永遠の愛の告白と、口付け。それがトロワの呪いを解くもうひとつの鍵であった。音をなさないトロワの口から、はっきりとその声が流れ出してきたのだ。
「……デュオ…?」
「トロワ……お前、しゃべれる様になったのか?!」
 デュオが驚きに目を丸くしたのを見て、トロワも己の声にはっとした。
「どうやら、その様だな」
冷静な口調だが、何処かに照れが見える。それがまた、デュオを刺激したらしい。
「その声。増々お前に夢中だな、俺」
 そう言ってトロワの身体を抱き寄せた。


……と、いう事でこの話は終わりますが、この後二人が何処へ行ったか、デュオの国はどうなったかは、皆様の考えにお任せするとして、お後は宜しいかと。

どっとはらい


■ 投稿者の方からのメッセージ ■

すみません、「投降してみて良いですか」とかほざいて、こんな話書いてしまいました。途中で完全にオリジナルを突っ走ってしまい、何処が人魚姫だとツッコミ三昧で、本当に申し訳ないです…。もうひとつ書いた方と差をつけようとしたら、なんか話が訳わかんなくなってきました……2×3は自分の大本命なんですが。(いえ、トロ受ならなんでもOKですけど)

もうちょっと深く掘り下げてみたら結構長く話が作れそうですが、流石にそれはやり過ぎ…いえ、今の段階で充分やり過ぎです、本当にすみません。

というか、「お嬢さん」は本当にやり過ぎました…でも「お兄さん」は言わせたくなかったんですよ、その辺りは勘弁して下さい。大変失礼致しました…眞係對唔住…



■ from 管理人 ■

素敵な作品を、ありがとうございます。お話の冒頭からデュオが、海に沈んでゆく自分を助けてくれたトロワの事を 「海の女神」 と呼んでいたりして、読んでいてウットリしてしまいました。デュオが 「お嬢さん」 と呼んでいたのも、私は素敵だと思います。ああいう場面でトロワのことを 「お兄さん」 と呼んでしまっては、楽しくないですものね(^-^)。

自分を殺しに来たトロワに向かって 「夜這い」 なんて言葉を使って、更にはウインク付きで冗談を言ってみせるところなども、とてもデュオらしいと思いました。そして小舟に飛び込んだ時も、トロワが怪我をしないように庇ってくれていたりして、デュオ優しいですねvvv

そして、この作品の中でもデュオは 「死神」 なのですね。そのせいで色々とツライ思いもしてきたようですけれども、そのお陰でトロワにも出会えたのですし、王宮の生活にも未練は全く無いわけですから、これからはトロワと二人で、きっと幸せに暮らせますね。トロワの呪いも無事に解け、ハッピーエンドで良かったです(*^-^*)。

( 2004.09.01追記 )
こちらにも、どむさんが描いてくださったイラストを掲載させていただきました。デュオ王子の服は、OZの軍服だそうです。格好良いですよねv どむさん、掲載許可ありがとうございます。

( 2005.06.26追記 )
イラストをカラー版と差し替えさせていただきましたv


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