トロワ姫と愉快な仲間たち   《 投稿作品 vol.1 》
 
作品名 : トロワ白雪姫と王子様
   王子様 : ヒイロ 投稿者 : マウラ さん

棺の中に入っているトロワ白雪姫が、実は、りんごを喉に詰まらせて仮死状態であることを見抜いたヒイロ王子様は、棺を取り囲む小人達を押し退けて、トロワの身体を抱き起こし、その背中を一度たたく。すると、トロワ白雪姫の口から林檎の欠片が飛び出して、ヒイロ王子様は息を吹き返したトロワ白雪姫のうっすらと開かれた緑の瞳に釘付けになる。
「お前が助けてくれたのか?」
トロワ白雪姫は穏やかな声でそう尋ねる。
「……あぁ」
一瞬、木漏れ日の色にも似た明るい緑の瞳に目を奪われていたヒイロ王子様は、一拍置いた後、静かに頷いた。
「礼をいう、ありがとう」
そのまま、トロワ白雪姫の手を取りヒイロ王子様はガラスの棺の中から助け出す。白い花に埋もれるように眠っていたトロワ白雪姫の、傾いだ身体を支えながらヒイロ王子様は、そのむせ返るような甘い香りに目眩を起こしそうになる。
「命を狙われていると聞いた」
自分の理性を超え、遠くに飛びそうになる気持ちを抑えてヒイロ王子様は、しっかりと地面に足を着いたトロワ白雪姫の身体から身を離す。
「……あぁ、だが、この生活は気に入っている」
穏やかな瞳のままでトロワ白雪姫はヒイロ王子様にそう答え、そして、何事かを考えるようなそぶりを見せた後、ヒイロ王子様をお茶に誘う。助けてもらった礼に、と。

ヒイロ王子様はその後、すっかりと体調の回復したトロワ白雪姫(と小人達)に見送られ、小人達の住む森を後にした。本当は、継母に命を狙われているトロワ白雪姫を一人になどしたくはなかったけれども、トロワ白雪姫がここに残るというのだから仕方がなかった。
「また、このあたりにくることがあればいつでも寄ってくれ」
別れ際、トロワ白雪姫はそう告げた(小人達はブーイングの嵐だった)。
「待っている」
何気なくつけ足された一言も、ヒイロ王子様の言えなかった言葉。
その言葉にヒイロ王子様は頷き、トロワ白雪姫に軽く口付た。
口唇を離した後、トロワ白雪姫はいつものように穏やかに微笑った。

森の瞳の色をしたトロワ白雪姫と出会うのには、森以上にふさわしい場所はきっと無い。
ヒイロ王子様はひらりと馬に飛び乗り、一瞬、名残惜しげにトロワ白雪姫を見詰める。
「すぐ、会えるのだろう?」
穏やかな笑みを浮かべたままでトロワ白雪姫。
「……当然だ」
胸の内を読んだかのようなトロワ白雪姫の言葉に、刹那虚を付かれたような形になりながら、それでもヒイロ王子様は言いきった。もう、気持ちを今日のこの森に入る以前の自分のそれには戻せないことをヒイロ王子様は知っていた。


*** END ***



■ from 管理人 ■

素敵な作品ですよね(*^-^*)

初めてトロワ白雪姫の瞳を見て釘付けになってしまったヒイロ王子様は、きっと顔には出さなくとも、内心とても動揺したことでしょうね。一生懸命、理性を保とうとしているヒイロ王子様の様子が目に浮かぶようです(^-^)

小人達との森の生活を 「 気に入っている 」 と言うところなども、トロワ白雪姫らしいと思います。別れ際、ヒイロ王子様に向かって告げた 「 いつでも寄ってくれ 」 というトロワ白雪姫の言葉に、ブーイングの嵐の小人達。気持ちは、凄くよく分かります(笑)。でも姫が王子様のものなのは、お約束ですものね(^-^)。勿論、王子様も姫のもの(笑)。二人のキスシーンは、きっと映画のように絵になるシーンだったことでしょう。

森の瞳の色をしたトロワ白雪姫と出会うのには、森以上にふさわしい場所はきっと無い。 」 この一文を読んだ時、綺麗な森の情景と、そこに佇む、森と同じ瞳の色をしたトロワの姿が見えたような気がしました。トロワには 「 森 」 という単語が、とてもよく似合いますよね。

トロワ白雪姫と別れなければならなくて、とても名残惜しそうにしているヒイロ王子様の様子もまた、ウットリでした(*^-^*)。マウラさん、素晴らしい作品をどうもありがとうございます。 m( _ _ )m


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