[
Homeに戻る
]
Trick or treat!
日は沈み、空を支配しているのは月と、競い合うように煌めく数多の星たち。
そんな刻限に、ノックもなしに突然、部屋の扉が開かれた。
現れたのは、長いマントと黒衣に身を包んだ、一人の男。
「べっぴんさん、こんなところに一人でいるなんて、イタズラされちゃうよ?」
にやりと笑んだ口元から伸びるのは、二本の長い牙。
しかし、そんな風に男に低音で凄まれた相手の方はといえば、はじめこそ男の方へと視線を向けていたが、すぐに何事もなかったように視線を戻してしまう。
男が、つかつかと歩み寄ってきても、視線を上げようともしなかった。
焦れた男が、ガシリと両肩を掴んでくる。
「んもー、ちょっとは反応しろよ、トロワー。俺が、せっかくハロウィンの夜を盛り上げようと思って、扮装までしてきたってのに」
「なんだ、ハロウィンの扮装だったのか。俺はてっきり、服の趣味が変わったのかと思っていた」
「どこから、どう見ても、扮装だろッ!?
ドラキュラ伯爵様だぜー。似合う?」
ポーズまで取ってみせるデュオだったが、トロワの反応は飽くまでも冷静だった。
「ああ。似合うな」
「……思いっきり、棒読みなんですけど」
口を尖らすデュオに、ソファーに座ったままトロワは問いかけた。
「俺に、どんな反応して欲しいんだ?」
すると即座に答えが返ってくる。
「いつもと違う俺様の姿に、惚れ直しちゃったーみたいな……」
乙女のポーズで告げるデュオの姿に、トロワは堪えきれずに吹き出してしまった。
「……笑ったな〜。
こうなりゃ、実力行使だ」
しかし強気な言葉とは裏腹にデュオは、ゆっくりとトロワをソファーの上に押し倒した。
「なにしろハロウィンの夜だからな。お菓子をくれないなら、イタズラしちゃうぜ?」
早速、トロワの上着の裾から、デュオの手が忍び込んでくる。
「ハロウィンの夜でなくても、イタズラされている気がするんだが、気のせいか?」
「あー、気のせい、気のせい」
笑顔で否定し、構わず続けようとしたデュオであったが、トロワから意外な言葉が掛けられた。
「デュオ、ちょっと耳を貸せ」
「“待った”の言葉なら、聞かないぜ?」
「いいから、耳を貸せ」
意図が分からず首を傾げつつも、それでも言われたとおりにトロワの口元に耳を寄せるデュオ。
すると、そんなデュオの耳に、ある言葉が吹き込まれた。
それは砂糖よりも蜂蜜よりも、もっと甘い、トロワからの囁き。
思わずデュオの顔も甘く蕩ける。
その隙にトロワは、デュオの下からさっさと抜け出した。
「あ、あれ!? トロワ……!!」
「生憎と、お菓子はないが、代わりに極上の甘いモノをやっただろう? だからイタズラはナシだ」
「えーーーーーッ!?」
勿論、そんな事では納得できなかったデュオが、急いでトロワを追いかけたのは、言うまでもない。
END
********** 後記 **********
二人が相変わらずバカップルなのは、全て作者のせいです(^-^;)
この話を読んだ かねこさん が、ハロウィンの扮装をしたデュオとトロワのイラストを描いてくださいました。せっかくの萌えイラストでしたので、掲載する許可をいただいてしまいました。ありがとうございます!
「 Trick or treat! 」 の中では、デュオは吸血鬼でしたが、送り狼(男)のイメージで 「 狼男デュオ 」 なんだそうです。なるほど!
でも、この狼の手では、一人ではマスクも外せないし、背中のファスナーも下ろせないので、着ぐるみを自分では脱げず、トロワにイタズラできません、との事。残念!(笑)
もしかしたら、それこそがトロワの狙いだったり……!?
デュオの代わりに(?)トロワが吸血鬼になってくれています。
一度デュオが着た衣装を、今度はトロワが……などと想像すると、それはそれでオイシイかも(笑)。でも二人の体型の違いから、デュオにはピッタリだったパンツのウエストが余ってしまって、無理矢理ベルトで止めているのかな〜とか、逆に丈は、少し足りなかったくらいで、密かにデュオ 「 ……………
」 だったりしたのかな、とか。
き、きっと身長差の分だよ、デュオ!(^_^;)
少しでも楽しんでいただけましたでしょうか? 励みになりますのでよろしければポチッと押していってやってください。
つまらなかった
面白かった
その他
「 その他 」 を選んだ方は↑に、ご記入ください
背景素材提供 「 ☆素材通り☆ 」 http://sozaidoori.karin-world.com/
▲ このページの上部に戻る